風の通る道−冷たい街で−

8月 28, 2009 · Posted in 詩−Poems− · Comment 

風の通る道が、突き抜けていく。
吹き抜けるのは、冷たく肌を刺す乾いた風。
季節を運ぶものとされる風も、
この街ではただ、埃と人の雑踏を巻き上げながら吹き抜けるだけ。
季節を感じさせるものなど、この街の中には何一つとてない。
ただ風は、そこを吹き抜けるのみ。
そんな街のただ中を歩く女がいる。
何の季節をも映す事のない、この街を歩く女が。
そこにいるのは、如何なる感情をも表さない人々。
この女もまた、その例に漏れず
能面でも被ったかのごとく表情一つ変えない。
女は自分をあざ笑うかのように、
ヒールでアスファルトを蹴った。
何時から自分はこんな風になってしまったのか。
何処で道を誤ったのか。
考えても仕方のない事、と
女はそっとひとりごちた。
そして女はいつものように、
ただ一人街の雑踏の中へと消えていった。


by Mizuho Aikawa/2002, 2009

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手の平サイズの「日誌」から・その26

7月 4, 2009 · Posted in フィルム, 写真関係, 日誌, 詩−Poems− · Comment 

これを書いている現在、新宿
エルタワー28F・ニコンサロン新宿より
出て来たところである。ニコンサロンには
それなりの頻度で足を向けているものの、
(好みによる)当たり外れが大きく、「さて
今回はどうなのやら…?」てな事を思って
いたのだが、女性七人によるネイチャー
フォトの展示が私的には大当たり。
同じ先生による指導を受け、トリミングは
一切しないという方針の下で撮影された
彼女達の作品群からは、生けとし生けるものの
息吹さえ感じられた。それらの写真たちを
目にしている間だけは、私の眼前にある
硝子の存在を、忘れた。

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雨が降る

9月 16, 2008 · Posted in 日本文学, 詩−Poems− · Comment 

雨が降る
 雨が降る
  雨が降る───
はじめは ぽつりぽつりと
やがては さあさあと
水の姿を変えながら
雨が降る
その水煙で
視界を曇らせながら
流れ落ちる涙のように
雨が降る
その雨のまっただ中
裸足の女が
ぱたりぱたりと歩いている
ヒールの欠けた靴を手に歩いている
傘も差さずに歩いている
その頬を流れる水は
空から落ちてくる
冷たい雨なのだろうか
それとも 眼からこぼれ落ちる
冷たい涙なのだろうか
その女を 私は傘の中から見ていた
そして私は女から目線を逸らして
降りしきる雨の中へ
そっと手を伸ばした
ああなんて 冷たいんだろう───


by Mizuho Aikawa/2008

炎の剣

8月 14, 2008 · Posted in 詩−Poems− · Comment 

刃は人を傷つけるもの
炎は焦がすもの
抜き身のままでは 剣は
触れるものすべてを傷つけてしまう
放っておけば 火は
すべてのものを灼いてしまう
何を断ち切るのか
何を焼き切るのか
過(あやま)つ事があってはならない
咎なき存在(もの)を傷つけることがあってはならない
我は炎の剣なれど
無闇に傷つけることは望まない
ただ 絶つべきモノを
断絶する存在でありたい


by Mizuho Aikawa/2008

愛という言葉

7月 5, 2008 · Posted in 詩−Poems− · Comment 

 今 愛という言葉が 大安売りされている
 街のそこいら中に 垂れ流しにされている
 そんな 愛なんて
 いつも決まって空っぽだ
 『幸せな結婚』というやつに 女達は憧れる
 けれども結婚なんて 所詮紙一枚でのこと
 『暖かい家庭』というやつに 人々は憧れる
 けれども家庭なんて 所詮檻でしかない
 今 愛という言葉が 信じられない


by Mizuho Aikawa/1999, 2008

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灯火−ともしび−

7月 1, 2008 · Posted in 詩−Poems− · Comment 

曇の流れる方向を 教えたのは誰であろうか?
太陽(ひ)の昇る方向を 指し示したのは誰であろうか?
今 曇は晴れ 空が姿を見せる
宵闇は明け 暁の光が世を照らす
暗闇から 明星へ
混沌の中 道標を示す
我が掌にある炎よ
灯火と成りて 迷える者へと道を示せ────


by Mizuho Aikawa/2008

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あなたを感じたい

6月 30, 2008 · Posted in 詩−Poems− · Comment 

 姿が、見えない。
 声が、聞こえない。
 それでも、なお……
 あなたの声は届かない。
 あなたの姿は見えない。
 それでも、並べられたそれは
 あなたを示す。
 その筈なのに……
 あなたの温もりを感じられないのは 何故?
 ディスプレイにあるのはただ、
 同じような文字の羅列。
 それ自体に感情を刻むことはできないから。
 時に残酷なまでに冷たいのに、
 時に包み込むように暖かいのに、
 ただ平らにされた情報だけを示してしまうから。
 だから、せめて……
 その声を私に届かせて。
 その姿を私の目に映して。


by Mizuho Aikawa/2008

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Lullaby−守歌−

3月 19, 2008 · Posted in 徒然, 日本文学, 詩−Poems− · Comment 

おやすみなさい
●●さん
永遠に
永久に
私の中で
安らかに
眠れ────


by Mizuho Aikawa/2008

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identity

2月 4, 2008 · Posted in 詩−Poems− · identity はコメントを受け付けていません。 

昔は 疑問が生じたときには
 よく親や先生なんかに聞いたものだった
  何でこんなことを、と
けれども答えは いつも同じ
 「ミンナ ソウシテイルノダカラ」
何て楽な言葉
 そして
何ておぞましい言葉───!
そうして いつしか
 疑問に思うことすら止めてしまった
悲しいかな 人は一人でいられる程に 強くはない
 だからこそ人は 救いを求める
  誰かと 同じであるということに
そうやって形作られた「同質」に
 私は おぞましさを感じる
狂っているのは 歪んでいるのは 皆なのか
それとも 私だけなのか……


by Mizuho Aikawa/1999・2008

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一口に 「愛」とはいえども やすからず

隆一さんは、確かに天才である。
音楽関係には疎い私でも、
それは認める。
だけれども……
否、だからこそ、
彼の唄う「愛」に
応える事は
私には、できない。
みゆきさんの『I love him』を
迷いもなく おそれもなく
言葉にできる今の私にとっても尚、
人から向けられる愛情に
応える事の出来ない自分を、
認識させられる───
その事実を、哀しいと思う。


by Mizuho Aikawa/2008
2008年2月3日
雪の舞う日本武道館にて、ペンを走らせる────

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